技を見る旅-2017夏の京都1-
今回の京都の旅で
ハッとさせられたのは
この展示でした。
京都国立近代美術館で行われている
技を極める
-ヴァンクリーフ&アーベル
ハイジュエリーと日本の工芸ー
宝石には普段気がむかないのですが
訪れてほんとうによかった。
世界各国の王室や女優が愛した
パリのハイジュエリーと
それに見合った日本の工芸が
比較展示してあります。
ハイジュエリーのデザイナーや職人の
インタビュー映像をみると
世に出るまでの気の遠くなる
繊細な技と情熱と時間を
感じることができて
ぐっと深く見ることができます。
さらに驚いたのは
ハイジュエリーのきらきらした豪華な質感と並べても
なんら遜色のない日本の工芸品の数々です。
ジュエリーと工芸品を一緒に目にすることで
その美しさを再発見した気持ちになりました。
ため息の出るくらい美しかったのは
四代長谷川美山の陶器類。
河合寛次郎のような
ダイナミックな造形とはまたちがう繊細さは
まさに陶器のジュエリーです。
七宝焼で名をはせた
京都の並河靖之の藤図花瓶と
同時期に活躍した東京の七宝家
濤川惣助の藤図花瓶がありました。
七宝の世界では
2人のナミカワと並び評されるほどで
作り方にも個性があります。
有線七宝の並河と無線七宝の濤川。
その作品を並べて見られて興味深いことでした。
そういえば並河靖之の住まいは公開されていて
訪れたことがありました。
並河靖之邸七宝記念館です。
7代目小川治兵衛の庭を集中的に見た時期があって
この家が小川治兵衛の作庭なのです。
琵琶湖疎水を庭に引き込んでいます。
公共的な大きな庭でなく、
個人邸の細やかな造作を見るのが好きなので
この庭はよかった。
今回も行ってみたくなり訪れたのですが
まさかの9月1日までの休館。
ガイドブックにもあまり載ってないですが
近代美術館からほど近いので
興味があったら行ってみてくださいね。
話を展示会に戻します。
展示は陶器だけではありませんでした。
大好きな志村ふくみの紬織着物もありました。
生糸の光と草木染の美しい色・織は
まさにジュエリーといえる品格と艶感があり
素晴らしかった。
そういえば昨年みた志村ふくみ展も
この美術館でした。
企画が私好みかも。
木工芸家中川清司の神代杉木画箱
繊細な小さな木片をつなげた文様は
どれだけの時間と手間をこの箱に!と
ずっと見ていたくなる作品でした。
中川さんといえば
と記憶をたどると
昨年ギャラリー凜の聡子さんと一緒に
中川清司の息子さんである
中川周二の中川目工芸比良公房に
お伺いしたことがありました。
(お名前を書いていて
さんをどこにつけるのか
わからなくなってしまいました。
作家名にはあえて敬称を略してみました。)
あの工房にもおとうさんの作品がありました。
作風は違っても
技が形を変えて代々伝わっていくというのは
いいものだなあと思いました。
服部峻昇の玉虫香合桐文。
玉虫の羽を使ってありました。
複雑な玉虫の色。
緑の中に青やピンク、黄など
見る方向を変えると
複雑に色が変化して美しい。
それだけでもため息が出るようでしたが
さらに驚いたのは
その横に
同じような模様のエメラルドを使ったジュエリーが
並んでいたことでした。
エメラルドと玉虫の羽
これはぜひ見比べていただきたいです。
この展示は企画の妙を大いに感じました。
ジュエリーの光と
ライト遣い
作品が重なり合って作る幻想的な空間。
竹林を思わせる展示の並びを
自由に歩いて見られるおおらかさ。
行けてよかった。
まず「京都に行く」を決めました。
京都に行く
という目で見まわしてみると
案外情報が入ってきます。
この展示も偶然入ってきた情報でした。
ほかにもご紹介したいと思っていたけれど
この展示だけでこんなに長くなってしまいました。
展示はもう一つ見ました。
細見美術館で行われている
ぎをん斎藤コレクションの展示です。
布の道標 -古裂にやどる技と美-
ぎをん斎藤は京都祇園にて170年続く呉服店で
7代目当主の斎藤貞一郎は
染織コレクターでもあり
古裂を紹介した本も出版されています。
この本に前から興味があって
頭の隅に置いていたところ
今回の展示を見つけました。
二つの美術館はとても近いので
一日で二つ回れますよ。