一滴のしずく
活動と行動 のことは前回お話ししました。
今回は活動と行動を支えている部分 思索と内省
そんなことをお話ししたいと思います。
私はよく考えます。
1日の半分は考えてるような気がします。
といっても難しい顔をして唸っているわけではなく
手を動かしながら話を聞きながら思うことがあると
どうしてそう思ったのかとか、じゃあこうしたらどうだろうかとか
そんな程度です。
しかしそれは私にとってとても重要です。
繰り返し考えることで自分が本当に大事にしていることに気がつくからです。
この癖は、仕事にも生かされていると思います。
例えば作庭するとき
私はまずお話を聞きます。
ご依頼の方は要望がはっきりしている方もいらっしゃいますが
要望の優先順位がほんわかしている方もいらっしゃいます。
発する言葉と本当の気持ちがずれていることもあります。
本当にしたいことは何かな、と考えながら話を聞いているので
提案の内容はもちろんのこと、施工の仕方も多種多様です。
一緒に施工してもらうこともあります。
特にお子さんが庭づくりに興味を持っているときは
一緒に手を動かします。
そうそう、毎年可愛いお手紙をくださる小さな人がいるのですが
一緒に施工した時はまだ保育園に入る前でした。
その後毎年一緒にしているので、その時にお手紙をくれるのです。
もう小学校に入って、すっかりお姉さんですが
また今年もお伺いするのが楽しみです。
メンバーさんの仕事の中の動きもよく考えます。
例えば将来この人は独立してやっていくだろうなあ、と思うと
独立したときに役に立つような仕事の仕方や考え方をお話しします。
独立する気はないけれど造園が大好きで長く続けたい、というメンバーには
入ってもらうたびに少しずつ手わざを覚えてもらってます。
心のリハビリも兼ねて、うちに来てくれてるのかなと思う人には
何か役に立ちそうな考え方を話します。
だからメンバーさんといえども2人で動く時は
話をしていることが違ったりもします。
自分の気持ちとしては1日に2つ何かいいことを伝えようと思っています。
伝えるといっても、逆に教えてもらうことも、とても多いです。
ありがたいです。
何人かで動く時は、それはチームとしての動きになるので
どの人に何をしてもらうと早くて綺麗でしかも楽しいかなと考えます。
そしてingreenのこの先は、いつも考えています。
メンバーの1人の人が、
ingreenはりささんそのものですね!
といってくれたことがありますが
それを聞いて、ああそうかもしれないと思いました。
だからこの先のingreenの行く道は、私自身の道でもあります。
植物に関わり、町に美しい景色を作りたいという思いは
この先ずっと変わらないと思います。
もう20年ほどやってきて、まだ飽きないというか
むしろどんどん深みにはまっていく感じです。
おもしろいです。
しかし時間は無限ではありませんから
ここで方向だけお話ししていこうと思います。
お話ししておいたら
もしかしたら実現率が高まるかもしれませんし
何より自分自身の心が決まります。
そんな意味で書いておきます。
2021年からのingreenは3つの方向でいきたいと思います。
一つは宿根草と低木を用いた庭を広めていくことです。
宿根草とは、一年草とは違って、
毎年根が残って次の年も次の年も花をつけてくれる植物のことです。
低木とは大きくても2mくらいで、
低くしようと思うと30cmで抑えることのできる樹木です。
これなら脚立に乗らなくても硬い枝をハサミで切れない人でも
手入れを楽しむことができます。
背の高い宿根草が風に揺れている様子は
見ているだけで幸せな気持ちになります。
もちろん高木と合わせてもいいのです。
そちらはプロに任せて
この部分はご自分で手入れするとか
手入れの仕方のデザインも提案できたらと思います。
2つ目は手入れのできる人を育てていくことです。
今でも私は施主さまと一緒に手入れをしたりすることをしています。
毎年通っているところは、施主さまの腕が上がっているのです。
嬉しい驚き。
手入れはプロに任せる部分と自分で楽しめる部分があると
庭を持つ楽しみが増えると思います。
花を切るということだけでも、景色を作るという目で見ると
技があります。
私は軽やかで光と風を感じられる景色に心惹かれます。
どうしたら感じられるのか、ずっと考えて手入れしてきましたから
お伝えできることがあると思います。
個人的に一緒に手入れするのは、楽しいことですが
もしかしたら他の方法があるかもしれません。
例えば本にするとか。
他にも何かいい方法があるかもしれません。
3つ目は上の2つとはちょっと違うかもしれませんが
文化財庭園や名古屋の歴史的風致の魅力を広めていくことです。
私は2年間京都の大学院で日本庭園学を学んでいて
実は今日やっと修士論文が完成しました。
それでその嬉しさでブログを書いているのですが
これが心の底から楽しい学びでした。
研究対象としては、地元名古屋の近代の庭園です。
特に今回は名古屋市東区白壁町にある
料亭か茂免の庭について研究調査しました。
ここ最近でやっと研究の着地点に納得がいき
文字に落とすことができました。
論文が通るかはこれからのことですが
研究の着地点を考えることは
私がこれからしたいことを明確にすることと重なりました。
名古屋は第二次世界大戦で市の4分の1が焼失しました。
それで歴史的な景観が分断されてしまいましたが
残った文献や細切れの景観をつなぎ合わせると
素晴らしい都市だったことが想像できます。
そのおもしろさに気がついて、それに庭園への興味が重なって
大学院に入学してしまったのですが
知れば知るほど深みにはまってしまって
いえ、知れば知るほど知らないことの多さに愕然とするのですが
これから知っていく楽しみの広さを思うと
胸がドキドキしてしまいます。
文化財庭園の保存修理や実際手入れするのは
私よりもふさわしい素晴らしい方々がいらっしゃるのは
十分わかりましたから
私ができることはなんだろうと考えてみました。
それは文化財庭園や名古屋の歴史的景観を
もっと研究したり
知らない人に伝えたりすることではと思いました。
おかげさまで今回の研究は料亭の庭でもありますし
これなら美味しいお料理を食べながらお話しできます。
そういったことが料亭を存続させる一助になるなら
こんな嬉しいことはありません。
そこから広げて他の料亭さんの庭や
名古屋の近代庭園のことをもっと研究して
お話しできるようになったらいいなと思います。
研究対象の東区白壁町は、近代名古屋の政財界人の住んでいた町です。
例えば豊田喜一郎さん(豊田佐吉の長男さん)が白壁町に住んでいたのですが
南山のあたりに別荘をお作りになったのですね。
その別荘がトヨタ鞍ケ池記念館に修復して移築されています。
白壁町をキーワードに近代財界人を追いかけるのも楽しそうです。
もちろん庭園を切り口にして。
こちらもどうやって広めたらいいのか
これから考えます。
まずは研究内容をパンフレットにして
お世話になっている施主様にお渡ししたい。
そしてやはりお世話になっている工務店さんや設計士さんたちにも。
それからのことはまた次に考えます。
以上
2021年にしたいことは
1、宿根草と低木の庭を作り広めたい。
2、植物の手入れのできる人を増やして、美しい景色を増やしたい
3、文化財庭園や名古屋の近代庭園のよさを伝えたい
やれることは1滴のしずくのように小さなことですが
一滴でも水に落ちれば、波紋が広がります。
そんな気持ちで、できることから少しずつ淡々と行動していこうと思います。
そしてこれは私1人でできることではありません。
今のメンバーさんたちの力や
これから力を貸してくれる人がいてできることです。
今年のご縁やつながりを心から楽しみにしています。
ingreen代表 松田りさ
画像は、春に庭に咲いていた花をお皿に並べたものです。
庭の花を摘んで飾ったり、プレゼントしたりするのはいいものです。